2023年12月15日
TOPs細胞提携医療機関様情報共有会 2023年11月 レポート2
CPC株式会社 ネットワーク事業部です。
2023年11月、TOPs細胞を治療にご活用いただいている先生方向けに情報共有会をオンラインで開催致しました。今回で3回目の開催となり、整形外科だけでなく、形成外科、脳神経内科や脳神経外科、血管外科と、様々な領域の先生方にご参加いただけるようになりました。様々な視点から盛り上がりを見せた情報共有会の模様を、3回に分けてご報告させていただきます。
今月号では、不織布基材開発に関する武田研究員の発表についてお届けいたします。
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東大ラボでの研究内容について
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東京大学・当社グループセルクリニック・CPC株式会社では、様々な技術をお持ちの企業とタイアップし、脂肪組織由来間葉系幹細胞(脂肪幹細胞)培養の要素技術開発に関する共同研究を行っています。今回発表する武田研究員は、不織布基材の開発・研究を始め、これらの共同研究に広く携わっています。
最初に、脂肪組織から脂肪幹細胞を単離する際の問題点について、発表がありました。
・脂肪組織をコラゲナーゼ処理(酵素で脂肪片を溶かし、細胞を取り出す処理)すると、コラゲナーゼによって細胞自体もダメージを受けてしまう
・コラゲナーゼ処理によって治療用の細胞を調整しようとすると、多くの組織量を必要とし、採取時に患者さんへの負担が大きい
・コラゲナーゼ処理には時間がかかるため、治療用の細胞を調整する方法としては時間がかかりすぎてしまう
次に、治療に使用するために最適な初代培養方法として、TOPs細胞で採用している不織布を用いた細胞培養方法について、データをもとにした発表がありました。この方法では、脂肪組織を不織布の上に置くだけで自然と脂肪幹細胞が組織から遊走してくるため、酵素処理をせずに活きのいい細胞が得られます。不織布には市販品もありましたが、供給量が少なく、素材としての検討が不足していたり、使用実績等が不充分であったりしたため、当社で大量に培養を行うには様々な面で安定性に欠けるという懸念がありました。そこで当社では、日本バイリーン株式会社様、東京大学整形外科様と3者共同研究をすることで、効率よく脂肪組織から脂肪幹細胞を単離できる不織布基材を開発しました。
本発表では、この不織布基材によるASC初代培養について、問題なく培養が進むか、培養細胞の回収量はどうか、従来の単離培養と比較してクオリティに問題がないか、脂肪由来幹細胞の分化能・増殖能に影響がないか、など多くの点での検証結果が示されました。
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培養に関すること
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武田研究員の発表パートでは「培養」という点からの質問とコメントが寄せられました。
いくつかご紹介します。
Q)培養日数はどのように決めているのか。
A)SOP上で初代培養の上限を設けている。また、患者さんによって異なるために培養士がひとつひとつ目視で確認をして決めている。
Q)何継代まで培養をするのか。
A)ある程度の継代をしても増殖能・分化能が落ちていないことは複数のサンプル数で確認をしてはいるものの、一般的には継代を重ねると増殖能は落ちていくため、TOPs細胞では、かなり少ない継代で培養をしている
ご意見)最初のころと比べて今の細胞の方が、性質が良くなっていることを感じます。
武田研究員)日々の培養、増殖能・分化能についても常にクオリティチェックをしています。それに加え、初代の培養の仕方、継代タイミングや方法といった培養士の経験やノウハウの蓄積によるところもあるかもしれません。
今回の武田研究員の発表では、培養基材だけでなく、人的・技術的なブラッシュアップもまた、たゆまず行われていることをうかがい知ることができました。
私どもが目指している、“患者さんへの侵襲が少ない、少量の脂肪からキチンとした脂肪由来間葉系幹細胞が培養できる”ことへの裏付けと、さらにそれを効率よく行っていくための培養基材の開発という点についてお話しいただきましたが、どうして少ない脂肪組織からこれだけの量の細胞を増やせるのか、という秘密に迫る内容でした。
こういった基礎的な裏打ちがあるからこそ、私どもは「きちんとした細胞をお届けできます」とお伝えができているのだと改めて感じました。
情報共有会の終わりにアヴェニューセルクリニックの辻医師から、「幹細胞治療については日進月歩であり、また定期的にこのような機会で情報共有をさせていただき、治療にお役立ていただきたい」といったコメントがありました。コラムでは全体の一部の内容にはなりますが、次回の開催時にもレポートを配信していきたいと思っております。
※配信時点での情報です。
今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。