2023年9月15日
辻晋作医師 再生医療の導入にあたって
近年再生医療という市場が注目されるなか、導入を検討したいと思われた際、多様な側面から悩まれる先生方は多いかと思います。アヴェニューセルクリニックで再生医療に取り組んでいる辻医師に、 “導入にあたって” という観点で「再生医療における治療法の違い」「自費診療について」「幹細胞治療を続けてきて、思うこと」といったお話を伺ってまいりました。インタビュー形式でご紹介します。
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様々ある再生医療における治療法の違い
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編集者) 現在の保険診療にとどまらない可能性を求めて、再生医療を導入したいと考える先生方は増えていると感じます。ただ、再生医療と一口にいっても、たとえばPRPや幹細胞を用いた治療、または上清など様々な治療法があります。これらの違いをどう考えればいいのでしょうか。
辻医師) 個々の患者様に対する治療についてではなく、あくまでも一般的にお伝えできる範囲でお話しします。まず、PRP療法はその日のうちに治療ができることが魅力とも言えるでしょう。再生医療等安全性確保法が施行されて現在に至るまでに、様々な診療科において導入している医療機関はかなり増えてきていると感じます。
次に、CPC株式会社で細胞培養を受託している脂肪由来幹細胞を用いた治療ですが、患者様ご自身の少量の脂肪と血液をお預かりし、約1ヶ月程度かけて培養した細胞を後日投与という形になるので、その日のうちに、治療ができるというわけにはいきません。しかし細胞を投与することで、患部の状態に応じて体内で細胞が適切に分化し、効果が発現すると考えています。
そして上清は、将来的に“良いもの”が作られれば、凍結してすぐに使えるようにストックしておくことができるようになると思いますが、現時点では検討が必要な部分が多いといえます。まだ、培養上清を作るには細胞培養を上回るほどのコストがかかりますし、効果という面で考えても培養した細胞を投与するほうがより即したものを期待できると思います。とはいえ、今後の可能性は非常に高いものであると言えるでしょう。
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自費診療であること
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編集者) 自費診療を始めるときに気を付けた方がいいことはありますか。
辻医師) 保険診療のみされていた医療機関様に気を付けていただきたいことは、混合診療にならないように、ということです。いくつかの注意点はありますが、保険診療と自費診療でカルテをわけていただくことは特に大切かと思います。
患者様への説明という点では、「標準治療ではない」ことをお伝えいただくことが大切だと思います。再生医療等安全性確保法の規制下の治療でしたら、同意書の内容をお伝えいただき、あくまでも“こういった治療もある”という選択肢の一つとしてご案内されるのがよいのではないでしょうか。
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幹細胞治療を続けてきて、思うこと
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編集者) 長年幹細胞治療に携わってこられましたが、いま思うことはありますか。
辻医師) 道半ばではありますが、やってよかったと思っています。
標準治療ではありませんが、治療された方の満足度は低くないと感じています。自由診療は費用が高くなりますし、その分期待されることもあります。しかし、感謝されることが増えました。医者として、患者様に「ありがとう」と言っていただけることは大きな喜びです。不安が全くないとは言いませんが、私は信じるに足る治療であると思っておりますし、この道を歩んできたことに後悔はありません。
【辻晋作医師 プロフィール】
医学博士/日本専門医機構認定形成外科専門医/日本再生医療学会再生医療認定医
経歴
・東京大学医学部 卒業
・アヴェニュー表参道クリニック院長(2004年5月~2018年7月)
・アヴェニューセルクリニック再生医療統括医師(2016年4月~)
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インタビューを終えて
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再生医療の治療に関する論文はAbout – PubMed (nih.gov)やGoogle Scholarでも見ることができます。しかし、実際の導入・治療に際しては、判断に迷うお悩み事が多様にあるかと思います。
たとえばCPC株式会社では、脂肪由来幹細胞を用いた治療についての様々なトピックスで医師間意見交換会を開催していくなど、情報共有の取り組みを行っております。また、当社グループに所属している臨床経験豊富な医師とのZOOMなどのweb打ち合わせを通して、ご不明な点を解決頂ける場を設定することも可能です。
再生医療の導入をお考えの医療機関の皆様、そして、導入したもののお悩みを抱えている医師の皆様におかれましては、是非一度CPC株式会社までご連絡いただければと存じます。
今回は以上です。
次回は、再生医療の現場看護師に聞く「教育体制」から「治療との向き合い方」等についてお届けします。