井上啓太医師 毛髪のメカニズム – CPC株式会社

2022年9月15日

井上啓太医師 毛髪のメカニズム

 今回は、アヴェニューセルクリニック院長の井上啓太医師より、「毛髪のメカニズム」についてご紹介いたします。

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毛髪再生のメカニズム

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「毛髪再生」は大変面白く、奥深いテーマです。

しかしこのテーマを取り上げる前に、生理的な状態で毛髪が伸びる、抜ける、という大変興味深いメカニズムについても是非とも触れておきたいと思います。

毛包(もうほう)。医学用語では毛穴、毛根、毛髪、皮脂腺、立毛筋など、毛髪に関連する構造物すべてを含めて、このように呼んでいます。

毛髪は毛包の一部に過ぎないんですね。

毛包は、毛髪を作るために「袋」みたいな構造になっているので、そのように命名されているようです。

この毛包はとても複雑にできていますが、単純化すれば「上皮系」と「間葉系」という2層構造になっています。

「袋」の外壁部分が間葉系で、内面が上皮系です。

袋の底には間葉系由来の突起物があって毛乳頭と呼ばれています。

この袋の内側表面を、上皮系の幹細胞が分裂しながら下にむかって這ってゆき、一番底の毛乳頭のところまで来ると一気に増殖して毛母を形成します。

その後、Uターンする形で毛母は上に向かって分裂し、ケラチンという硬いタンパク質と色素に富んだ毛軸を形成します。

これがどんどん伸びて袋のてっぺん、すなわち毛穴から外に飛び出して、毛髪として私たちの目に触れるようになります。

これは、「毛周期」といわれる毛包のサイクルのうちの「成長期」の姿ですが、やがて袋の先が細く小さくなって成長期は終わり、毛髪は抜け落ちるか、または毛穴に刺さっただけの状態になります。

上皮系は袋(毛包)の上部にだけ「上皮系幹細胞」のかたちで残り、毛乳頭は小さくなって袋の底に沈んだ状態になります。

これが「退行期」と「休止期」です。

正常な毛包であれば「何らかのきっかけ」から、毛乳頭と上皮系幹細胞が接近して、この休止状態を脱します。

接近した毛乳頭の刺激により上皮系幹細胞の活性化が起こり、上皮系が増殖を開始します。

こうして毛包は再び成長期に入り、毛髪を作り始めます。

この「何らかのきっかけ」は長らく不明とされてきましたが、近年そのメカニズムが一部解明され、実は毛包を取り囲んでいる「脂肪幹細胞」が成長期に入る「きっかけ」をコントロールしていることが分かってきました。

(男性型脱毛症では休止期が長引き、成長期が短くなってしまっていることが知られていますが、脂肪幹細胞の何らかの機能不全が悪影響を与えている可能性があります。)

ヒトの毛包はこれらの「成長期」「退行期」「休止期」を3年から6年おきに繰り返しています。

私たちの頭皮には10万本の毛髪があるとされていますが、この営みが日々それぞれの毛穴の奥で起こっていることを想像すると、大変驚かされますし、なんだか毛穴がムズムズするような気がしませんか?

わたしもこのムズムズが気になり、これで博士号まで頂戴したクチです。

次回はこのメカニズムを踏まえて、「さまざまな毛髪再生のアプローチ」について解説したいと思います。

   

【アヴェニューセルクリニック 井上院長プロフィール】

日本形成外科学会専門医/医学博士/東京大学非常勤講師/自治医科大学非常勤講師

/静岡がんセンター特別非常勤医師/下肢静脈瘤血管内焼灼実施医

経歴

・東京大学医学部 卒業

・東京大学形成外科助手

・埼玉医科大学形成外科助手

・静岡がんセンター形成外科医長

・コロンビア大学皮膚科