TOPs細胞提携医療機関様情報共有会 2022年7月 レポート1 – CPC株式会社

2023年8月18日

TOPs細胞提携医療機関様情報共有会 2022年7月 レポート1

2022年7月、TOPs細胞を治療に活用されている先生方の情報共有会がオンラインで開催されました。本年三月に続き二度目の開催となり、実際の臨床現場で治療に携わっている医師間で活発な意見交換が行われました。メルマガでは2回に分けてレポートが配信されましたが、今回はその(2)として「培養上清に関する研究内容」と「歯科領域での再生医療」についてご紹介します。

        

     

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 培養上清に関する研究内容について

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お話を伺ったのは、昭和大学 歯学部 口腔生化学講座 講師の矢野文子先生です。

        

「ヒト脂肪幹細胞由来培養上清のヒト上皮細胞とケラチノサイトに対する効果の検討」の研究論文が、2022年3月末に【Regenerative Therapy(日本再生医療学会誌)】にアクセプトされました。

       

題名:Effects of conditioned medium obtained from human adipose-derived stem cells on skin inflammation

      

著者:Fumiko Yano, Taiga Takeda, Takafumi Kurokawa, Toshiya Tsubaki, Ryota Chijimatsu, Keita Inoue, Shinsaku Tsuji, Sakae Tanaka and Taku Saito

      

本情報共有会の最初に、この論文内容についてご発表いただきました。

      

培養上清(Conditioned Media)では、MSCからの産生因子(サイトカイン、成長因子、エクソソーム、マイクロベジクル)が炎症抑制や組織修復に寄与するとの報告が多く、また、Cell-Freeであるメリットもあり、培養上清タンパクやエクソソーム投与の研究が整形領域でも多く報告されています。

      

この論文における研究では、ヒト皮膚線維芽細胞とヒト上皮細胞の培養系に培養上清を投与したり、耳に発赤と炎症を伴うマウスモデルに培養上清液を塗布することで、その発赤・炎症に対する抑制効果について検証しています。詳細内容は本メルマガでは割愛させていただきますが、MSC投与と同じく、培養上清も炎症抑制効果があることが検証されました。また、抑制効果検証は特異的なサイトカインの量や種類で確認されています。

      

参加医師から塗布する培養上清液の濃度に対する依存の有無について質問があり、矢野先生からは今回の実験系で設定した濃度範囲内では大きくは変わらないが、実用化する場合は最適な濃度を検討する必要があると示されました。

      

このご発表のあと、幹細胞と培養上清との併用について費用の面での意見交換がありました。細胞培養にかかわる医師からは、「コスト面で考えると、培養上清を作るコストは培養細胞を作るコストと変わらないため、現時点では安価に作れるものではない」としたうえで、「但し効率よく培養上清を大量に濃縮できることが可能となれば、これまで廃液処分されていた培養液が有効活用され、将来的に化粧品などへの添加物としての可能性があるかもしれない」というご発言がありました。

      

培養上清に関するご研究は、今後は後継に引継がれて続くことになるとのことですが、進捗が非常に楽しみです。

    

     

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 歯科領域での再生医療

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続いて、歯科領域での再生医療の取り組みについてお話いただきました。

    

歯学部では、歯髄幹細胞は骨髄細胞に比べて3-4倍の増殖率があるという論文をもとに、歯髄幹細胞を用いての再生医療を行っているとのことです。

    

顎関節症は、20代から高齢者まで幅広い世代に患者層がいるものの、対処療法しかなく、手術をすることもほとんどありません。標準治療として良い治療法がないのが現状です。

    

顎関節症の病態とその治療法開発のために、外科的炎症モデル、力学的負荷モデルの2つのマウス顎関節症モデルを開発しました。網羅的な解析の結果、その病態は変形性膝関節症と類似していることがわかり、変形性膝関節症と同様に顎関節症に対しても、幹細胞治療が効果を発揮するのではないかと示唆されます。

    

また、歯周病と全身疾患についても触れられました。歯周病菌は内毒素をまき散らし、歯肉の炎症が全身の疾患にも影響を及ぼすとのこと。矢野先生から出席された先生方に対し、「幹細胞治療で顎関節症が良くなった例があればぜひ共有いただきたい」というご発言に対し、脂肪由来幹細胞を他疾患に対して点滴投与したことによる副次的効果として、歯周病が完治した事例についてのご発言がありました。今後、歯周病モデルに対する幹細胞治療の効果の検討を行っていく予定であるとのことでした。

    

幹細胞治療の可能性に益々期待が高まる意見交換となりました。

    

   

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【矢野文子先生 プロフィール】 

2021年7月 – 現在                         昭和大学 歯学部 口腔生化学講座 講師

2018年4月 – 2021年6月             東京大学医学部附属病院 ティッシュエンジニアリング部 整形外科・脊椎外科 骨・軟骨再生医療講座 特任准教授

2016年12月 – 2020年10月         Harvard Medical School, Boston Children’s Hospital Genetics, Orthopedic Research Center JSPS Scientist for Joint International Research

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 第2回情報共有会を終えて~編集後記

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ご参加いただいた先生方におかれましては、今回も活発にご意見を交換していただき誠に有難うございました。そのなかで本情報共有会についても触れられ、「今後、第二種再生医療等・治療に関する提供計画の届け出をする医療機関は増えていくと思われる。そのようななか、この会では“患者さんにどう投与していくのか”について、いろいろな先生方の知見を合わせていくことができる。この会を通して再生医療の未来が見えてくるのではないかと期待している。」とのお声を有難くも頂戴しました。今後も3~4ヶ月に1度の頻度で、継続して開催をしていきたいと考えていますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。