TOPs細胞提携医療機関様情報共有会 2023年9月レポート – CPC株式会社

2024年7月16日

TOPs細胞提携医療機関様情報共有会 2023年9月レポート

CPC株式会社 ネットワーク事業部です。

   

2023年9月、TOPs細胞を治療にご活用いただいている先生方向けに情報共有会を オンラインで開催致しました。今回は、過去最多の参加人数となりました。その 情報共有会の模様を、一部ご紹介させていただきます。

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     はじめに…

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最近の研究から、局所投与または静脈投与された幹細胞によって分泌される タンパク質やエクソソームが効果を発揮しているのでは、と考える研究者もいます。 エクソソームに関する研究は、“がん治療”、“再生医療”、“神経科学”などの分野で 急速に進展しています。エクソソームという言葉だけでいえば、特に美容領域だと 一般の方にも認識されつつあります。今回は当社R&Dチームの研究でご指導を いただいている麻布大学獣医学部准教授の西田先生から、「幹細胞由来細胞外小胞を 用いた脊髄損傷治療法の開発(獣医学での挑戦)」という演題でご発表いただきました。

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  獣医学領域応用の可能性

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ヒトの治療薬を開発する際に、齧歯類モデルを用いて有効性を確認し、その後ヒトへ 臨床応用するための研究が実施されていますが、ヒトへ応用する際に動物種差の ギャップを埋められない場合が多くあります。イヌは齧歯類モデルに比べて大型であり、 自然に病気が発症し、病態もヒトと同様にバリエーションが存在します。そのため、 ヒトのトランスレーショナルリサーチモデルとしても非常に有用だと考えられています。 イヌは多様性(体格・容姿だけでなく、行動、遺伝子等)があり、病気のメカニズムや 生活環境がヒトと類似しているため、齧歯類モデルで得られる研究結果と比べて、 有用性が高いと考えています。

  

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 イヌにおける幹細胞を用いた脊髄損傷治療

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イヌにおける幹細胞を用いた脊髄損傷に対する臨床研究では、10例中6例において 歩行が可能となりました。イヌの運動機能を客観的に評価するTexas Spinal Cord Injury Scale(TSCIS)でも、投与後2か月程度で運動機能の改善が見られました。注目すべき ことは、全症例に明らかな合併症がなかったということです。2021年には、世界初の イヌに対する再生医療等製品が某日本企業から発売され、獣医療においても臨床現場で 使用が可能な状況となってきています。

  

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幹細胞治療の課題からエクソソームの研究へ

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動物への幹細胞治療は、ヒトの場合と同様、細胞までの“準備期間やコスト面”と“目的としない 細胞への分化、腫瘍化”が課題と言われています。幹細胞の組織修復に関与すると考えられている エクソソームだけを回収することができれば、コスト面や準備期間の問題もなく投与できるのでは と考え、エクソソームの研究を進めていくことにしました。

  

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臨床応用と課題

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エクソソームを用いた治療の臨床応用としては、主にバイオマーカーと治療の2つの側面があります。 治療としてエクソソームを用いる課題としては、どのセルソース (脂肪・骨髄・臍帯など) を用い、 どのような環境や条件で細胞を培養し、エクソソームを回収するかです。また、保存法や投与法に ついても検討が必要です。さらに、エクソソームを治療としてどのように認可していくか、 現在議論されています。

  

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エクソソーム治療の効果と有用性

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エクソソームを回収するためにはできる限りタンパクを含まない培地が望ましかったため、 適切な培地を開発しました。その培地を用いて細胞を培養し、培養上清から効率的に エクソソームを回収する方法を開発し、その有効性についてモデル動物を用いて検証しました。 そこでの結果からエクソソームの有効性を目の当たりにし、魅力に取りつかれました。脊髄損傷に 対するエクソソームの有効性としては、細胞死の抑制、血管新生、神経の炎症抑制、神経軸索の 伸展など様々な機序が明らかにされています。細胞と同様の効果なのか、それとも限定的な効果に ついてはまだ分かっていません。ただ、細胞を用いない新たな治療法になりうるのではないかと 感じています。現在、エクソソームによる有効性は様々な研究で明らかにされています。しかしながら、 エクソソームを回収、精製するために多くの作業工程を行うことで、臨床応用が遠くなる可能性を 感じました。現在、これらの作業工程を簡素化し、早期に臨床応用できる技術の開発を研究しています。

  

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海外におけるエクソソーム臨床データの実際

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海外では、ヒトへのエクソソーム臨床研究は盛んに行われています。これらの研究では、 セルソース、培地、回収法、ターゲットとなる疾患などが異なっているため、エクソソームの効果や 結果にも影響を与えるのではないかと思われます。今後もエクソソームを用いた臨床研究は なされていくかと思いますが、セルソース、培地、回収法、ターゲットとなる疾患などによって、 結果が変わってくるのではないかと思っています。

  

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質疑応答

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💬参加者
同じ疾患に対して治療する場合、エクソソームの質によって効果が違った経験はありますか?

👨‍⚕️西田先生
エクソソームの研究において非常に重要なポイントです。細胞が培養される環境によって、分泌される エクソソームの性質が大きく変わってくると考えています。実際そういった結果が報告されています。 ストレスのない栄養状態が豊富な環境で分泌されたエクソソームはあまり性能は高くないのではと 思っています。細胞にストレスのかかった培養条件下で分泌されたエクソソームは有効性が高いと 考えており、多くの研究にもそのことが示されています。

💬参加者
エクソソームの製造方法をこんなに詳しく聞けたのは、今回の講演が初めてでした。解説を聞くまでは、 どんなセルソースでエクソソームを作るのかが重要だと思っていました。どんな環境下で作られた エクソソームなのかが、重要度の大きな割合を占めているということでしょうか。

👨‍⚕️西田先生
エクソソーム研究の第一人者である研究者によると、セルソースによっても大きな差が出ると、 聞いたことがあります。脂肪・骨髄・臍帯血などセルソースによってエクソソームの性質に違いが あると考えられますが、どういった環境で細胞を培養するかについても重要です。また、 エクソソームの回収においては培地成分のタンパク質などをできる限り除去しないといけないので、 培地の成分を把握しておくとともに、培地成分を除去する精製過程も重要なのではないかと 考えています。

💬参加者
エクソソーム治療に関しては、今後疾患によって細分化(パーソナライズ化)して開発が進むのでしょうか。

👨‍⚕️西田先生
疾患を模倣した環境で作ってエクソソームを回収できればというのは、非常に面白いアイディアです。 セルソースや培養環境によって効果が異なるのは前述した通りです。今後そういった部分に着目して 研究していきたいと思います。

  

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 第5回情報共有会を終えて~編集あとがき

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情報共有会では、いま治療にあたっておられるなかでのお悩み、治療の効果など、先生方が日々感じられていることの共有だけでなく、再生医療のこれからについても知っていただける機会になれば幸いです。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

  

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 👨‍⚕️西田英高先生 プロフィール

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2005年に大阪公立大学を卒業後、奈良の中山獣医科病院にて8年間勤務。その後、テキサスA&Mヘルスサイエンスセンターにて博士研究員を経て、岐阜大学、大阪公立大学の教員を経験し、2023年4月より麻布大学小動物臨床研究室に着任。

  

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今回の配信は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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