2022年3月15日
寺尾友宏医師 PRPと幹細胞治療の作用機序の違い
今回は、PRP治療、幹細胞治療を導入しているお茶の水セルクリニック院長の寺尾友宏医師より、PRPと幹細胞治療の作用機序の違いについてご紹介いたします。
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PRPと幹細胞治療の働き
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今回は、同じ「再生医療」ジャンルの治療法であるPRP(Platelet-rich plasma)治療と幹細胞治療の違いについてお伝えします。
ご存じの通り、PRP治療は血小板濃度を高くした血漿を使って行う治療法であり、幹細胞治療は体の中にある幹細胞(体性幹細胞)を使って行う治療法です。
この2つの治療法の作用機序を考えるには、各々の細胞が体内で何を行っているのかについて理解する必要があります。
●血小板の働き
血小板は、ケガをした時などに損傷した部位の止血を行う作用が有名です。しかし、血小板の仕事はそれだけではありません。
炎症の管理、血管新生、細胞遊走などを行って、修復プロセスを動かす働きも持っています。
言わば「修復のスタート係」です。
血小板に含まれるPDGF-BBは血管周囲に存在する周皮細胞に刺激を与え、それらをMedicinal Signaling Cellsなどに変化させる働きがあります。つまり、血小板に含まれる成分によって、修復に必要な細胞が局所に集められるのです。
しかし、血小板には核がないため、たんぱく質を新たに合成することは難しく、そのため、血小板は損傷した部分を直接修復することができません。
つまり血小板の働きとは、成長因子などによる抗炎症作用に加えて、修復に必要な細胞を呼び寄せることで修復作用を発揮すると考えられています。
●幹細胞の働き
一方、幹細胞は直接的に組織の修復を担当しています。
最近では、MSC(Mesenchymal Stem Cells:間葉系幹細胞)と呼ばれていた細胞には、Medicinal Signaling CellsやTissue Specific Stem Cellsなど複数種の細胞が含まれており、それらの細胞が、周囲に働きかけることや細胞自体の作用によって、組織の修復が行われるという考え方がされています。
ホメオスタシスの一部を担う体性幹細胞は、もともと体を正常な状態に保つために働く役割があります。体性幹細胞の減少に伴い体内の状態を正常に保てなくなり、その結果として様々な加齢性疾患が発症するということが報告されています。
このことからも、体性幹細胞を維持することは、体が正常な状態を維持する上で大変重要だと言えます。
●血小板と幹細胞の働きの違い
細胞数が乏しいことが原因で、PRP治療による自己修復が起きにくい場合があります。
関節の中は、その典型例です。
関節内にPRPを投与すると、滑膜などが刺激されて修復メカニズムが活性化すると考えられています。PRPは直接修復を担当できないため、どの程度の修復担当細胞を働かせることができるかという点が重要になります。しかし、関節の中は元々細胞が乏しいため、十分な細胞を働かせることができず、結果として治療効果が限定的になってしまう可能性があります。
一方、幹細胞を投与する場合は、一部の細胞は直接修復を行う働きをするのに加え、様々な物質を合成できる特性をいかして修復メカニズムを長時間活性することができると考えられています。
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最後に
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整形外科領域で自費診療を活用する例が少なかったためか、最前線で活躍されてきた整形外科医の先生方で細胞治療を担当するケースはまだまだ少ないと感じています。
徐々に増えてきているものの、まだ足りないと思っています。
積極的に人工関節置換術などの手術に取り組んでいる先生方にこそ、幹細胞治療を活用していただきたいと考えています。
【寺尾友宏医師プロフィール】
日本整形外科学会専門医 / 日本再生医療学会認定医 / 日本整形外科学会認定スポーツ医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
経歴
東京医科大学医学部卒業 / 帝京大学医学部形成外科 / 埼玉医科大学形成外科
東京女子医科大学非常勤講師 / アヴェニューセルクリニック / お茶の水セルクリニック院長